『愛遊記』
第十回:「鈍悟浄(どんごじょう)」
《この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません》
一方で青年は一人浮かない表情をしています。
「知馬(しりうま)くんどうしたのかな。これから合コンなんだから盛り上っていこうよ」
法師がそのように聞くと、
「ちょっと緊張してきちゃって。すみません」
などと知馬青年が言うのです。
「仕方がないなぁ。今夜は僕に任せておけ!」
すっかりテンションの具合が仕上がった法師は頼もしそうなことを言いました。
「ぶわははははははは!本当に童貞かよ!
その歳で!ぶっ!童貞!!ひぃーははははははははっ!!!」
その歳で!ぶっ!童貞!!ひぃーははははははははっ!!!」
法師の腹筋ははちきれんばかりになっていました。
そのうち一人の長身の女性が法師を見下ろしながら、鋭い目つきで法師に視線を合わせてきます。
その迫力に鍵垢一行が固まっていると、
と促され、お店の中に入ることになりました。
八戒がナイスな媚び精神を発揮し、気の利いたことをし始めましたが、
幹事の知馬はというと緊張のあまり場をまとめるどころではなさそうです。
「早くオーダーしなさいよもー、店員さぁーん」
酒が揃って、とりあえず合コンは開始です。
法師はここぞとばかりに悟空に自分をほめさせます。
「鍵垢さんはホントすごい人なんですよ。業界ではそこそこの立場だし、年収もすごいし、
などと法師も悟空をたたえます。女性陣の話を聞くどころか二人で、アピールというか自慢話が続いています。
それでもその女性が比較的心優しい方だったためか、こんな知馬とも話を合わせてやっていて、
などと、いつの間にかいい感じになっていたのです。
これを横目で見ていた法師はもちろん怒り心頭です。
その上、頑張ってアピールしているのに女性側の反応は薄いし、
自分の前にいるのはあの目つきの鋭い女性と、小太りな熟年女性です。一体この差は何なのかと。
とりあえず、法師は糞便でもして落ち着こうと席を立ちました。
いつもに増して勢いのいいお通じでした。少し心が落ち着いてきたような気がします。
ここで法師はダメ元で一計を案じてみることにしたのです。
「それはすみません、あの豚野郎にはもっと女性を楽しませるやり方についてよく言っておきます」
「こんなんだったらあの知馬くんが私の前に座ればよかった!」
(しめた!これは渡りに船だ!)
「実はあの知馬ですけどね…ここだけの話、今回は貴女狙いだったみたいで。でもあんまり女の人慣れしてなくて、あんな調子で」
「えっホント?狩りが捗って助かる」
「もう時間も時間ですから、あいつを個人的な二次会に誘ってみては?
「これが私のLINEね。先にお店に行って待ってるから」
そういうわけで話がまとまりました。法師の負の感情によって仕掛けられた策略の歯車が回り始めたのです。
そして、合コンは普通にトラブルもなく終わりました。
「二次会行く人ー!」などと言い出す人もなく、あっさりと解散しました。
「いやー、ぶっちゃけ微妙でしたね」
などと言う八戒に「微妙なのはてめぇだろ」という言葉が、法師も知馬も喉から出る一歩手前でした。
などと言う八戒に「微妙なのはてめぇだろ」という言葉が、法師も知馬も喉から出る一歩手前でした。
「知馬くんさ、ある女性から個人的に二次会やりたいって連絡があったぞ」
「あっ、えっ!?マジですか!その女性ってあの…」
というと、尻馬青年は目を輝かせて、
「行ってきます!!」
とダッシュで二次会に向かいました。
と八戒がこぼすと法師は、
とニヤリと笑って事の真相を語りました。
それを聞いて「この人はホンマ、鬼畜やなぁ」と、八戒もようやく法師の危険性に気が付いたのです。
次の日、法師たちは知馬との待ち合わせ場所に向かいました。
昨夜の一件がどんなものだったのか、聞き出すのが楽しみで、法師は顔がニヤついてしまうのを止めることができませんでした。
後悔したような表情を浮かべたかと思えば、その後無表情に切り替わったりと、複雑というより不安定な面持ちです。
その様子から、法師たちは大体のことを察しました。
と法師が声をかけると、知馬は憎々しげな表情を向けてきたので、
「あ、でもそれは自己責任だから。じ、こ、せ、き、に、ん」
と法師は知馬をなだめました。
諦めたようでいて、澄み切った顔をしている知馬を、今度は法師が慈しむような眼差しでみつめていました。
そして法師は知馬に「鈍悟浄」という法名を授けました。
また「浄」は、吹っ切れさせて旅に出させる決意を促すためとはいえ、脱童貞の件について過酷な運命を強いたことについて、それが少しでも浄化されることを願って付けたものです。
さすがに法師も少しばかりは罪悪感がなくもなかったのです。
一方その頃街はずれで、突如として土が盛り上がりました。
「△#########!」
法師が邪法・外法を使いすぎたりしたことによって徳が足りない状態になっていたのか、あるいはD&Dの現世に対する執着がそうさせたのかわかりませんが、成仏に失敗したのです。
「△#########!!!」
D&Dは今後も、現世をさまよい続けるのでしょうか。
次回予告:第十一回「天王寺の変」
コメント
コメント一覧
>その歳で!ぶっ!童貞!!ひぃーははははははははっ!!!」
ワイを呼びましたか?
さり気なく物語に登場志願して来た出たがりのヲ茶会め!
出たな妖怪出たがりだっぺ蟹!