『愛遊記』 第七回:「将虎公主」 《この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません》 (いいぞ。効いてる効いてる!)

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鍵垢法師は高安夫人の目を通じて、ネトウヨ 悪鬼の合蛇夏鬼が苦悩する様を見てほくそ笑んでいました。

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このまま続ければ更に悪鬼はトーンダウンするかもしれません。
いよいよ悪鬼もおしまいかと思ったそのとき、闇の中から麗人があらわれました。

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「(´・ω・`)さっきから見とったけどなぁ、あんたやり過ぎと違うん?」
各所に潜んだ密偵たちからの報告を受け、夏鬼の危機を察知した将虎公主が駆けつけていたのです。
「(´・ω・`)それ以上やるんやったら、それなりの覚悟をしとかなあかんで」
公主は評判のアニメ声で高安に警告しました。

すると夏鬼は嬉しそうな顔をしながら、 「将虎!ちょうどいいところに来た。さっきからあの人が変なこと言ってくんだよ。あと俺さぁ、今日発射出来なくて溜まってんだよ。なんとかしてくれよ〜」
などと言って、不遜にも右腕を公主の肩に回し、左手が豊かな乳房に触れそうになったその刹那でした。

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公主の姿がいかにも恐ろしげな姿に豹変したかと思えば、夏鬼の身体が宙を舞い、地面に叩きつけられました。

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ベストなスピード、角度、タイミングを伴った右ボディが炸裂しました。羅刹女がその正体をあらわしたのです。
「…脇が甘い言うてるやろが」

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とこれまでの可愛らしい声とは打って変わってドスの効いた声で吐き捨て、ボロクズのようになった夏鬼を公主が見下ろします。

吐瀉物にまみれた夏鬼は朝が来るまでぐっすりと眠りにつくことでしょう。

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戦慄したのは高安夫人の目を通じて一連の出来事を傍観していた法師です。

悪鬼の周辺に、多くの同志たちを謀略によって再起不能に追い込んできた猛女がいるという噂を聞いてはいました。

しかし聞くのと、実際に見るのとでは大違いです。

奸智に長けるだけではなく、凄まじい膂力を持ち、大将格であるはずの夏鬼をも一瞬で昏倒せしめたのです。
把握していた情報と違います。夏鬼は最悪のネトウヨと考えていたのに、その上を行く存在があっさりと出現しましたし、夏鬼はハゲていません。

鍵垢法師の直感が大音量で危険信号を発していました。
(ヤバい、どうにかして逃げなければ、切り抜けなければ!誤魔化さなければ!!) 「わ、私はこの辺で失礼させていただきますわ」
高安は脱兎の如く駆け出しました。
「待たんかいワレェ!!」
即座にそれを追う鬼のような形相の羅刹女将虎公主。複垢とはいえ捕まったらとても大変なことになりそうです。

とにかく、公主の追跡を振り払って、本垢である自分がいる鍵のかかったお堂まで安全に退避させなければなりません。 法師は最大限の集中力で高安を操作し、なんとか鍵のかかったお堂に逃げ込ませることに成功しました。

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無事、撒いたようです。 脂汗を滲ませた法師は、一旦お堂の外に出て、深呼吸をしました。安堵ともに新鮮な空気が胸に流れ込んできます。
ところがその直後、法師の顔から血の気が引いていきました。なんとあの羅刹女がお堂のそばまでやってきていたのです。 (ちゃんと撒いたはずなのに!何故だ!)

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公主は事前情報から、あらかじめ高安の逃走先の目星をつけていました。ジムで鍛えた筋骨隆々の姿の公主は周りの様子を伺い、法師を見つけると、ずんずんと真っ直ぐに近づいてきました。

一歩踏み出すたび、足が地面にめり込んでいます。 法師はなるべく目を合わさないように取り繕っていましたが 「ねーねー、お坊さんお坊さん、この辺で走っている人とか見かけませんでした?」

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と声をかけられてしまったのです。
「そ、そんな女性は見かけませんでしたよ」 と法師は一応はとぼけてみましたが、 「私はただ、走ってる人がいなかったかと聞いただけなんやけど、なんで私が探しているのが女性って知ってるん?」
猛女は甘くありません。すぐさま法師の返答の不審な点を指摘しました。公主は右手の先のいかにも恐ろしげな爪をシャキシャキ言わせながら更に問い詰めました。
「その女な、高安夫人言うて、合蛇さんという人の家族についてどやこや言うてたんやが。あまりにも目に余るから、問い詰めようと思っててん。ところでお坊さんにも聞きたいことがあるねんけど」
公主はそう言うと、魚拓の法を用いて法師と高安の関係にまつわる資料を提示しました。

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法師と高安がSNSにアップした、好きな音楽、自宅周辺の天気、ポケストップなどには共通点があり過ぎたのです。

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しかし法師はそれらを見てニヤリと笑ったのです。
(ふん、決定的な証拠が一つもないじゃないか)
「高安夫人?誰ですかそれは?偶然でしょう」
「それじゃこの猫、見てもらえる?同じ柄の猫がおるなんて、ありえへんやろ」

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「いやぁ、よく似た猫がいるもんですねぇ。私には高安という知り合いはいません」
法師のあくまでもしらを切り通さんとする構えに、公主の怒りは爆発寸前でした。

今すぐ首をヤってしまおうかと考えたほどです。 「高安という人なんて知らないって言ってますよね?(笑)」
法師が三度目の高安との関係についての否認を行った直後、近くにいた野良猫が「みゃんご」という大きな声で鳴きました。

新約聖書のマルコ伝に「ペテロの否認(※1)」という似たような話があるのですが、仏教僧である法師はもちろんそんなこと知る由もありません。
明確な証拠がない以上、水掛け論になると考えた公主は、 「(´・ω・`)まぁええけど、この後のことは周りの人たちが決めることやな」
と言って素の麗人の姿に戻ると、立ち去っていきました。公主は明確なエビデンスと法律論に基づいて追及するスタイルですので、今回もその一線を守ることにしたのです。

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「ふ…糞便…」
法師は安堵のあまり腰が抜けてまた尻餅をつきました。

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下着は汚してしまいましたが、羅刹女からの追及を切り抜けたのです。 しかし、事の成り行きを見守ろうとして集まっていた合蛇界隈の野次馬たちはこの展開について一様に不満の表情です。

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そして、バカ、アホ、間抜け、卑怯者、ウンコ、底辺、腐れ外道、ケーブルテレビ、ウンコ、カス、能無し、といったありったけの罵倒を一斉に投げつけたのです。
図太いとは言え、極限の恐怖と戦った後の法師に大量の非難に耐えきる余力は残っておらず、速攻でお堂の中に逃げ込みました。ほとぼりが冷めるまで籠ろうという算段です。

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Twitter社の強い法力によって護られたお堂の中なら侵入されたり、覗かれたりする心配はありません。

ここなら安心安全です。 野次馬たちはしばらくお堂に向けて罵倒を続けたり、撮影をしたりしていましたが、次第に飽き始めて何処ともなく散っていきました。 ちゃっかり現場にとどまって、この光景を見ていた公主はとても満足気な顔をしていました。その日あったことを仲良しの汁魔王屠鬼(じゅうまおうとおに ※2)に共有して楽しんだりするのではないでしょうか

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次回予告:第八回「黄八戒(きはっかい)」 3月3日(日)リリース予定 ※1『ペテロの否認』 最後の晩餐の後、キリストが使徒ペテロに対して「あなたは鶏が鳴く前に、三度私を知らないと言うだろう」と予言し、キリストが連行されて弟子と疑われたペテロが、キリストを「知らない」と三度否認した際に、予言の通りに鶏が鳴いたというエピソード。 ※2『汁魔王屠鬼』 圧倒的な巨躯を誇る筋肉妖仙。 いつも肉ばかり食べているが、別に人をさらったりしているわけではない。摂取したタンパク質を即座に筋肉に同化させられる特異体質であり、食事のたびに服がはち切れて愛用の六尺褌一丁の姿になる。また、余計な肉汁を耳から放出することがあり、これが汁魔王の由来。見た目に反してノンケであり、人当たりもとてもいい。


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